一、外郎売 |
外郎売実は曽我五郎 小凛 |
玉櫛笥扇のかなめ末広く
廓の威勢ぞたぐいなき
春の景色の整えば
はや口慣れてうるわしく
小田原名物ういろうは いらっしゃいませぬかういろう
富士の香匂う絞どころ
系図正しき御家なり
そもそも妙薬のそのいわれ
昔陳の国の唐人
是を深く秘め置きて
名に響いたる十八番
十八年の天津風
せくなせきゃるな早口づくし
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唄 |
二三恵 |
三味線 |
菊弥 |
鳴 物 |
金太・二郎 |
後 見 |
小ひろ |
『外郎売』は、享保三(一七一八)年に、二代目市川團十郎が演じた『若緑勢曽我〈わかみどりいきおいそが〉』の中で扮した役です。外郎売とは中国から渡来し、小田原で「透頂香〈とうちんこう〉」という名薬を売り出して有名になった人の名前で、この薬の効用については色々な説があるのですが、この作品では喉に効き、口の中がさっぱりする薬になっています。この薬の効力を弁舌さわやかに大道で売り立ての口上を言う様子を「喋る芸」として見せるのが、この芝居です。もっとも、現存する薬店では外商をする習慣はなく、病気で困っていた團十郎が、この薬で良くなったお礼にこの薬のことを世に知らせたい、という熱意で舞台にかけられました。
長台詞をとうとうと述べる弁舌の芸は古くからあり、荒事の芸の一つになっています。言葉によって悪霊を鎮める意味があるのです。
二代目團十郎は生来雄弁術に長けた役者で、その芸をこうした設定の役で観客に披露したのでしょう。このように薬の効用を言い立てる芸ですから、単独で上演されることは少なく、『助六』の中の一役として演じられることが多かったのですが、七代目團十郎は家の芸を集めた歌舞伎十八番を制定したとき『外郎売』を、その一つに選びました。
今回は、「言い立て」の部分、長ぜりふと早口早言葉を一幕の所作に仕上げました。 |
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二、舞子の賑い |
上 京の四季 |
輝ひ奈・翠夏 |
春は花いざ見にごんせ東山
色香競そう夜桜や浮かれ浮かれて
粋も不粋も物堅い二本差しても
柔こう祇園豆腐の二軒茶屋
みそぎぞ夏はうち連れて
河原に集う夕涼み
ヨイヨイヨイヨイヨイヤサ
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中 笠森おせん |
菊弥 |
鐘一つ売れぬ日も無し江戸の春
花の噂の高さより土の団子の願事を
かけた渋茶のおせん茶屋
あたしや見られてはずかしい
掛行燈に燈を入れる
入相桜ほんのりと白きうなじの立ち姿
春信えがく一枚絵
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下 山形をどり |
菊弥・小凛・輝ひ奈・翠夏 |
どんな舞台も花の舞台よ
つらいけいこも結んでひらく
今日のおどりに心もおどる
おいでよみてねみててよね
やまがた舞子の晴れ舞台
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唄 |
清丸 |
三味線 |
小菊 |
鳴 物 |
金太・二郎 |
後 見 |
小蝶 |
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